男女共同参画・ダイバーシティ推進
理学部長からのご挨拶
2023年3月29日 理学部長 林 政彦
『福岡大学理学部 男女共同参画・ダイバーシティ推進へ向けて』
男女共同参画社会の形成はSDGsの目標の一つにも挙げられており、様々な組織で進められています。大学においても女性教員の積極採用、女子学生比率の底上げなどが進められています。しかし、福岡大学理学部の男女共同参画の状況は、お世辞にも進んでいるとは言えない状況です。学部長に就任してから、教育の現場や運営の現場に特に理学部では女性が極めて少ないということに危機感を強く抱くようになりました。
理学部では、現在、教授会構成員に女性教員が不在です。これは、理学部の状況を端的に反映していると同時に、ブレークポイントであろうとも認識するようになりました。なぜ、女性教員数を増やすことができていないのか、自らの感覚、考え方を振り返るために、また、理学部の教職員の皆さんに振り返っていただくために、男女共同参画に関する講演会を開催するなどしてきました。理学部所属の女性教員の皆さんに集まっていただき、感じていること、考えていること、依頼したいことなどを直接、生の声で伺うことも始めています。
私自身は、「女性が働きやすい環境」をつくるということ、そのような状況が「見える」ということが必要であると考えています。また、女性へ向けた配慮が必要であるとともに、「女性が」ではなく、「だれもが」という点が本質的に重要なポイントでもあるとも考えています。現在は、このような、気持ち・考えを理学部の運営に反映させていこうと考えています。
そして、理学部長としての私の男女共同参画推進へ向けた考え、そして、取り組みを始めたことを社会に向けて発信しようと考え、ホームページに男女共同参画推進について紹介するこのコーナーを設けさせていただきました。
これからも、男女共同参画、ダイバーシティを推進してゆくために、考え、聞き、行動する取り組みを繰り返し行っていきたいと考えています。
ご理解と、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
P.S. 福岡大学研究推進部女性教員支援室のWebページもご覧ください。
女性教員の転出入
ご報告が大変遅くなりました。
理学部で昨年度から本年4月にかけて、女性教員の転出入が3件がありました。
・2024年1月に地球圏科学科助教に、冨松由希先生が着任されました。
・2024年4月をもって、
化学科助教の塩井(青木)成留美先生が帝京大学講師へ転出されました。
地球圏科学科助教に、横倉伶奈先生が着任されました。
皆様の今後のご活躍を祈念いたします。
2024 年 7 月 29 日
福岡大学理学部長 林 政彦
生物科学を専門とする女性研究者の皆様へ
-生物科学関連分野の女性教員限定公募をはじめました-
国際連合の提唱する SDGs でも提起されているダイバーシティ、男女共同参画推進についての日本社会の立ち遅れは顕著です。現在、国内において男女共同参画の推進等が積極的に進められつつありますが、逆流ともいえる社会的な動きもあります。日本社会の健全な発展のためには、様々な分野において男女共同参画・ダイバーシティを意識的に推進してゆくことが求められています。日本の大学の教育・研究環境における立ち遅れの度合いも大きく、多くの大学等で女性教員、女子学生の比率を高めるための取り組みが始められています。
福岡大学理学部は、自身の要請により、教育・研究分野の現状を分析し、再編を含む改革の検討を進めてきました。男女共同参画という視点で現状を直視すると、理学部の女性教員の比率が極端に低い(約 8%)など、その立ち遅れは深刻です。女性教員の比率の抜本的な向上は、理学部の社会組織としての基盤の確立のために避けて通れない課題の一つとなっています。
一方で、理学部の教育・研究分野として、生物科学関係の領域の大幅な拡大を計画、教員(教授・准教授)公募を行うこととしました。女性教員比率が極端に低いという現状を改善するために、この公募を女性教員限定公募として実施することとしました。これは、現在の女性教員の比率が 40%以下の場合の特例措置として(ポジティブアクション)を実施するものです。
女性研究者の皆様の積極的な応募を期待するものです。
同時に、女性限定公募を実施することにつきまして、関係各位の皆様のご理解を賜りたいと思います。
2023 年 6 月 6 日
福岡大学理学部長 林 政彦
公募の詳細はこちらのサイトをご覧ください。
・地球圏科学科公募情報 HP
https://www.sci.fukuoka-u.ac.jp/earth/koubo.html
講演会の開催報告
令和6年度理学部FD講演会 (第1回) | |
日 時: | 2025年2月20日(木)15:00~16:10 |
場 所: | 福岡大学18号館 1824教室 |
テーマ: | 日本の大学のダイバーシティ欠如の実態と人権、及び組織における弊害 女性の参画を妨げる無意識のバイアス |
講 師: | 裏出 令子 先生 |
京都大学名誉教授 |
講演の様子
林学部長による裏出先生のご紹介
講演後は複数の質問にもお答えいただきました
令和5年度福岡大学理学部第2回FD講演会 | |
日 時: | 2023年10月30日(月) |
場 所: | 福岡大学18号館 1824教室 |
テーマ: | (教育機関におけるジェンダーフリーの課題 ーLGBTQ+が自然な環境へー |
講 師: | 田中 将司 先生 |
九州ルーテル学院大学 人文学部心理臨床学科 助教 FUboxに当日の動画をuploadしております。ご覧ください(学内のみ)。 |
令和5年度福岡大学理学部第1回FD講演会 | |
日 時: | 2023年9月15日(火) |
場 所: | 福岡大学18号館 1824教室 |
テーマ: | (仮題)男性?女性?「性差」とは何か ー性スペクトラムの科学ー |
講 師: | 諸橋 憲一郎 先生 |
九州大学名誉教授 |
女性教員と(学部長)の懇談会 | |
日 時: | 2023年3月17日 |
場 所: | 福岡大学理学部 |
テーマ: | 理学部に求めたいこと |
令和4年度福岡大学理学部第3回FD講演会 | |
日 時: | 2022年12月6日(火) |
場 所: | 福岡大学18号館 |
テーマ: | 戦後日本女性政策と男女共同参画の現代的課題 |
講 師: | 神崎 智子 (かんざき さとこ)氏 |
福岡県男女共同参画センター「あすぱる」センター長 |
令和4年度福岡大学理学部第1回FD講演会 | |
日 時: | 2022年7月12日(火) |
場 所: | 福岡大学18号館 |
テーマ: | LGBTQ+について考える |
講 師: | 田中 将司 |
九州ルーテル学院大学 助教 |
女性教員のコメント
福岡大学理学部で活躍中の女性教員からコメントをいただいています。
・福岡大学の女性研究者支援事業と男女共同参画について
塩井成留実(化学科、助教)
生化学が専門である私は、福岡大学に着任当時から医学部の先生方と共同研究をする機会がありました。医学部は、ポスドクやテクニカルスタッフの多くは女性です。私はその医学部のコミュニティから実験技術支援だけでなく、休憩時間などの談話で子供の幼児期に人気の便利グッズや、保育園の申請のタイミングなど、働く女性にはとても助かる情報を得ることができていました。2人目の産前産後休暇の時に、共同研究先より福岡大学の医学部から始まった男女参画推進事業の新たな取り組み(全学部への支援拡大)について申請してみないかと声をかけて頂きました。当時、このアカデミックの世界で生き残っていかなければならないと思っていた私は、育児と大学での職務(教育と研究)の両立をどうすればできるのか、わからずとても葛藤していました。【だれか】、または、【何か】に少しでも助けてもらいたいと藁にもすがる思いで、福岡大学の支援事業に参加したことを覚えています。現在、私がこのように自分がやるべき職務を全うできているのは、福岡大学の男女参画推進事業のおかげだといっても過言ではありません。それは、私が3人目を出産してからも、この事業の研究支援のおかげで、すこしでも前に研究を推進することができたからです。さらに、同じ状況や環境の職員とチームを組み共同研究を行うことで、私生活に関することも相談できるフラットフォームが職場(大学)にもあるという安心感ができました。この安心感は、不安と葛藤が多い時期の心の大きな支えとなっていました。
この支援事業を通して他学部や他大学の情報が入ってくるだけでも私にとっては有意義なものでした。もう、10年前になりますが、九州地区が、関東や関西地区に比べて男女参画の取り組みに対して大きな遅れが、生じていることを知りました。また、その原因が各地域の文化や習慣による無意識バイアスによるものだということを聞いて、大きな衝撃を受けました。さらに、私は、3年前から海外との共同研究を通して、特にヨーロッパやアメリカのジェンダーに対する意識の違いを目の当たりにすると、日本そのものが、大きな遅れを取っていることにカルチャーショック受けます。例えば、【女の子だから、】という言葉をあまり海外では耳にすることがありません、また、今日の家族の夕食は何を作ろうかと、男性研究者と雑談する環境が日常会話にあります。私には、2人が男の子、1人が女の子の3人の子供がいます。知らず知らずのうちに子供たちや学生さんに対して認知バイアスを与えていなか心配になりました。理学部に入学してくる学生さんに対してもジェンダーに関係なく、彼らが望む道に責任をもって進み、彼らの能力を最大限に活用できる場で、いきいきとその能力を発揮してもらいたい、と心から願っています。ある地区の小学生では、二分の一成人式という行事があります、誰もが将来なりたい自分を自信に満ちた表情で発表します。その夢は、ジェンダーによって変わる必要があるのでしょうか?
大学は高等教育です。時代によって教育現場においても求められることが変わっているように思えるかもしれませんが、教育という本質の意味は変わらないと私は考えます。私のたった一つの人生経験からつくられてきた価値観は、たった一例にしかならない、限られたものです。多様な学生さんの多彩な能力を高めるには、教育現場のダイバーシティは必須です。自然科学を純粋に探求することが好きな福岡大学理学部の教員の先生方と一緒に、お互いの専門性と価値観で相乗効果を発揮しながら、学生一人ひとりの能力を認め、高めていく次世代支援をしてゆきたいと考えています。