シラバス
講義の内容(シラバス)
1年次開講科目
2年次開講科目
3年次開講科目
開講科目 | 開講期 | 単位数 | 担当教員 | 講義概要 |
物理化学C | 前期 | 2 | 勝本 之晶 | 物理化学Cでは,2成分以上の系の様々な相図を理解することから始め,化学反応の熱力学へと進みます.物理化学AとBで習得した知識を活かし,化学の諸問題の解析を行うことが,本講義の目的です.物理化学Cの内容を理解することによって,高校の化学で習ったすべての化学的現象のメカニズムが明らかになります.凝固点降下や沸点上昇,蒸気圧,浸透圧などといった希薄溶液の諸性質,吸熱反応,発熱反応,化学平衡,ルシャトリエの原理など化学反応に関する現象を化学熱力学によって理解します. 講義は基本的に板書によって進行しますが,必要に応じて補足プリントを配布します.ノートをしっかりとって復習できるようにしてください. |
放射化学実験 | 後期 | 2 | 川田 知、 倉岡 功 |
「放射化学」のシラバスで簡単に紹介したように、放射能(厳密には放射性物質, RI)は自然科学の基礎研究から医療・工業・農業などの現場に至るまで広く利用されている。本化学科では、物質の移動・分配過程や遺伝子工学の研究における放射性トレーサーの利用、物質の構造解明に対するX線・中性子線の利用などが行われている。また、これらの研究に従事した卒業生で、放射性医薬品の製造、非破壊検査、放射線防護や安全管理の現場で活躍しているものも多い。このような現実を踏まえて「放射化学実験」が両コース共通の選択必修科目として位置づけられ、実験項目も選定されている。 まず、放射線の測定原理は他の分析法と著しく異なるので、前もって理解しておく必要がある。そこで、GM計数装置および液体シンチレーションスペクトロメーターによるβ線の測定、NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメーターおよびGe半導体スペクトロメーターによるγ線の測定とエネルギー分析の原理を学ぶ。これらの知識と技術を利用して、いくつかのRIの半減期を測定する。また、遺伝子工学への放射性トレーサーの利用例として、DNAのRI標識および生成物の分離・定量の実験を行う。 非密封RI実験においては、その取り扱いを誤ると環境汚染や放射線障害の危険性を生じる。そこで、RIの取り扱いは法律により「RIセンター」のような特殊な施設内に限定されているとともに、安全性に関して通常の化学実験よりさらに厳しい注意が要求される。その関係で、放射線管理についても実習する。 |
外書講読Ⅰ | 前期 | 2 | 祢宜田 啓史 大熊 健太郎 |
化学英語について本講義で初めて本格的に学ぶことになりますので,用例を中心に学びます。近年の国際化により英文を読む必要性が格段に増えています。化学の世界においても国際的な会議に用いられる言語は,たとえどこの国の研究者との交流においても英語です。したがって,最低限の化学英語の理解〔発音も含めて〕は必要です。そうすれば将来のビジネスチャンスに恵まれることになります。 |
放射化学 | 後期 | 2 | 寺田 成之、倉岡 功 | これまで、日本ではエネルギー自給率の向上や温室効果ガス削減の観点から旧来の火力発電を見直し、原子力発電へのシフトが求められてきた。しかし、2011年の福島での原発事故以来、原子力に対する風当たりは強くなってきた。一方、「放射性物質」は放射性トレーサーや放射線源として自然科学における基礎研究から医療・工業・農業などの幅広い現場で活用されており、我々の生活水準の維持や向上に最早欠くことのできない存在となっているのも事実である。 化学の分野でよく利用される「放射性トレーサー法」は、①「安定および放射性同位体の違いに関わらず化学的性質は同じである」こと、②「放射線の測定感度が他の分析法と比べて著しく高い」という2つの原理に基づいている。ところが、放射線はヒトの五官には全く感じない。したがって、放射線と適当な物質との相互作用を通じて間接的にその存在と強さを知る(測定する)のである。つまり、放射線の測定原理は他の分析法と著しく異なるので、よく理解しておく必要がある。 放射性トレーサーは微量でその存在を確認できるため、微量成分の検出やその定量法として、特に生化学や分子生物学の分野において重要な道具となってきた。そこで、最近その応用範囲を広げている蛍光トレーサー法と比較しながら、これらの分野における利用について学習する。また、放射化学実験に付随して放射線管理の知識や技術が要求されるので、それらについても学習する。 |
環境化学 | 後期 | 2 | 今任 稔彦 | 科学の進歩は人類に快適な生活をもたらしたが、一方では地球を構成している物質系のバランスを崩している。即ち、人類の活動によって、本来、地球が有している物質循環作用と自然の浄化作用の限界を超える化学物質が排出されている。そのため自然環境にかかる負荷が急増し、地球は危機的状況に向かっているといわれている。従って人類は自然環境問題に真剣に取り組まなければならない転換期をむかえている。 環境中に排出された化学物質は、通常、低濃度であるため、その定量には高い感度と選択性を備えた分析法の適用が必要である。 本講義では序論で人類の活動と環境破壊について述べ、次に環境分析に利用されるいくつかの分析法を取り上げる。さらに実際に環境分析を行う上で必要ないくつかの事柄を重点的に扱い、将来、環境化学問題に携わる上で直面する勉学に資する。 |
物質機能化学実験 | 後期 | 2 | 安藤・川田 山口(敏)・栗崎・石川・市川・濱口・吉田 |
天然に存在する物質や人工的に合成された物質の性質や機能は、そのミクロ構造に深く係わっている。また、生理活性物質や金属酵素などの機能発現は関与する金属イオンや配位子の酸化還元反応に起因している。したがって、機能性物質の合成や設計のためには、物質の構造や性質を分子レベルで調べることが必須である。機能物質化学実験では無機分析化学や物質機能化学で学習してきた知識を基礎に、より高度な機器分析装置を用いた金属錯体の構造と性質を調べる方法を習得する。まず、各自が鉄錯体を合成する。合成した鉄錯体の結晶および溶液中の構造をそれぞれ単結晶X線回折法およびNMR法を用いて決定する。また、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて、合成した鉄錯体の酸化還元挙動を明らかにする。 本実験で用いられる手法の理論や測定法の詳細は、物質機能化学実験と併行して開講される物質機能化学Cで講義される。実験では、全員が鉄錯体を合成した後、3つのグループに分かれて、X線回折実験、NMR実験、サイクリックボルタンメトリー測定を順番に行う。したがって、グループによっては講義内容と実験内容が前後することもありうるので、テキストや参考書で予習をしておく必要がある。 (a)鉄錯体の合成 2,2'-ビピリジンを配位子に用いた鉄錯体を合成する。 (b)サイクリックボルタモグラムの測定 合成した鉄錯体のCV測定を行い、得られたサイクリックボルタモグラムから鉄錯体の酸化還元挙動の解析(酸化還元電位の決定、酸化還元化学種の同定など)を行う。 (c)単結晶のX線回折測定 合成した鉄錯体の単結晶を選び、単結晶X線回折計を用いてX線回折測定を行う。得られたX線散乱データを用いて鉄錯体の結晶構造(格子定数、空間群、原子座標、温度因子、原子間距離、3次元構造)を決定する。 (d)溶液中の鉄錯体の構造解析 合成した鉄錯体とキレート配位子の1H-NMR測定を行い、得られた化学シフトや緩和時間の結果より、溶液中の鉄錯体や配位子の構造やダイナミクスを調べる。 |
構造物理化学実験 | 前期 | 2 | 祢宜田・勝本 仁部・山田 渡辺・真田 |
本実験科目は、2年次の基礎物理化学実験および基礎量子化学実験の上級編であり、実験内容は、大きく分けて、物理化学的なテーマと量子化学的なテーマから構成されている。 物理化学は、物質が示すマクロ(巨視的)な性質を主に扱う。その中で電気的性質、熱的性質、そして、界面の性質を取り上げ、実験としては、誘電率の測定、熱分析、表面張力の測定を行う。 量子化学的内容の構造化学実験では、分子と光の相互作用を通して分子の構造を研究する分子分光学について学ぶ。分子分光学の研究対象は、分子の構造、化学結合の強さなどの静的な問題から、励起分子などの活性な反応中間体の構造、解離過程などの動的挙動の問題にまで広がっている。実験では、分子分光学の最も基礎的な方法である赤外吸収スペクトルの実験を通して、分子構造に関する知見、非調和振動子の概念、振動回転相互作用、解離エネルギーなどについて学ぶ。 物理化学や量子化学は、化学の中でも特に理論的色彩の強い分野である。実験の背後にある理論的事柄についても十分学んでほしい。 |
物質機能化学A | 前期 | 2 | 川田 知 |
分子の対称性と結合、電子状態は密接に関係している。この講義では、分子の対称性からどんなことがわかるかを調べ、群論という系統的概念を導入する。さらに、分子軌道や分子振動の解析に群論を用いた対称性の考え方が不可欠であることを学ぶ。とりわけ、一見しただけでは対称性の重要性がわからないような分光学的データから、群論を用いることにより、分子構造と電子構造に関する情報を引き出すことが可能であることを学ぶ。 |
物質機能化学B | 前期 | 2 | 川田 知 | 生命科学や材料科学における物質の機能やその発現には、その活性中心である金属錯体が関与している。金属錯体は、中心金属イオンの周りに、ある数の分子やイオン(配位子)が取り囲んでいる化合物を指し、たとえば、植物の光合成に重要な葉緑素(マグネシウムの錯体)、動物の細胞に酸素を運ぶヘモグロビン(鉄の錯体)など、古くから重要な役割を果たしてきた。金属イオンを分離・抽出する分子認識物質、高温超伝導物質、磁性材料、金属触媒、金属酵素だけでなく、最近では、分子素子(分子メモリー、分子ワイヤー、分子モーター、分子磁石、スイッチ、ディスプレーなど)の研究において金属錯体が重要な役割を果たしている。 そこで物質機能化学Bでは様々な機能性金属錯体の性質を理解するために、金属錯体化学の基礎から応用までを学ぶ。前半では金属錯体化学の歴史、金属錯体の種類と命名法、金属錯体の構造とその決定法、金属錯体の物性と機能発現の原理、溶液中で生成する金属錯体の性質と反応など、金属錯体を取り扱う上で必要な基礎的概念を学び,後半では、21世紀の金属錯体化学として、生命科学や材料化学に関与する金属錯体の応用および機能発現物質の設計について学ぶ。 錯体化学に関する高度な内容も含んでいる。したがって、それを理解するために、教科書を使って予習,復習をしっかり行うこと。 |
物質機能化学C | 後期 | 2 | 栗崎 敏 山口 敏男 安藤 功 |
天然に存在する物質や人工的に合成された物質の性質や機能は、そのミクロ構造に深く係わっている。また、生理活性物質や金属酵素などの機能発現は関与する金属イオンや配位子の酸化還元反応に起因している。したがって、機能性物質の合成や設計のためには、物質の構造や性質を分子レベルで調べることが必須である。物質機能化学Cでは、併行して開講される物質機能化学実験の内容(サイクリックボルタンメトリー、X線回折、NMR)に関する理論や原理および応用を学ぶ。 サイクリックボルタンメトリー(CV)は物質の酸化還元反応に関する最も一般的な実験法である。授業では、電位を印加したときの電極・溶液界面における反応について学び、電極面における電子移動反応、溶液拡散層における物質移動反応を学ぶ。次いで、CVの測定によって得られる電流電位曲線とその応用および他のいくつかの電気化学測定法について学ぶ。 単結晶のX線回折に関連して、X線回折の理論および基礎的な結晶学について学ぶ。次に、結晶解析の原理とその測定法については、X線回折装置を用いて回折データを測定する実験手順について学ぶ。その後、測定したデータの処理方法については測定データの消滅則から空間群を決定し結晶の持つ対称性を求める方法や構造を決定する方法について講義する。 NMR法は有機化合物の同定に広く用いられているが、錯体の構造研究にも有効な手段である。フーリエ変換核磁気共鳴の原理を復習し、金属錯体を測定対象として、化学シフトやスピンースピン結合定数からの錯体の立体構造の予測、錯体の磁性の違いによる化学シフト変化について述べる。また、NMR法から得られる別の情報として緩和時間測定の原理を紹介し、緩和時間から錯体の配位子のダイナミクスについて学ぶ。 |
環境分析化学 | 前期 | 2 | 栗崎 敏 岩永 達人 |
人類の社会活動によって、本来、地球が有している物質循環作用と自然の浄化作用の限界を超える化学物質が排出されている。そのため自然環境にかかる負荷が急増し、地球は危機的状況に向かっているといわれている。従って人類は自然環境問題に真剣に取り組まなければならない転換期をむかえている。 環境中に排出された化学物質は、通常、低濃度であるため、その定量には高い感度と選択性を備えた分析法の適用が必要である。 本講義では序論で人類の活動と環境汚染について述べ、次に環境化学分析に利用されるいくつかの機器分析法を取り上げる。さらに実際に環境科学分析を行う上で必要ないくつかの事柄を重点的に扱い、将来、環境科学分析に携わる上で取得する必要のある環境計量士や公害防止管理者の国家資格の勉学に資する。 |
物理化学D | 後期 | 2 | 祢宜田 啓史 | 物理化学Dでは二つのことを学ぶ。一つは化学反応の速さであり、もう一つは溶液中のイオンの移動についてである。物理化学A、BおよびCでは、時間の経過によって系の状態が変化しない状態、すなわち、平衡状態の熱力学について学んできたが、ここでは、時間とともに変化する現象を扱う。 化学反応は我々に身近な現象であり化学で扱う主要な分野であるが、意外にその本質は理解されていない。特に原子分子レベルからの理解はこれからの研究の進展に大きな期待がかかるところである。その導入として、歴史的な研究の経過をたどりながら、速度式が簡単な微分方程式で与えられることを学ぶ。すなわち、一次反応、二次反応、逐次反応などがどのような速度式で与えられ、それぞれの反応がどのような特徴を持つかを把握する。また、反応速度の温度依存性を反応の遷移状態という考えを基にArrheniusの式から理解する。最後は、反応速度理論を学び化学反応速度の理解を深める。 イオンの移動に関しては、まず、電気伝導度速定から得られる電気伝導度、伝導率、モル伝導率、当量伝導率がどのような意味を持つ量かを把握する。次に、電解質とは何かを明確にしながら、電解質に関するKohlraushの平方根則やイオン独立移動の法則、Arrheniusの電離説などの重要な法則や概念を学ぶ。更に、輸率の測定法とその意味を理解し、輸率から求められるイオンの移動度などから電解質中における個々のイオンの存在状態の特徴について考える。 |
量子化学C | 後期 | 2 | 仁部 芳則 | 量子論の基礎となるシュレーディンガー方程式を解くことによって、定常状態におけるエネルギー準位を求めることができる。これらのエネルギー準位を実験的に求めるためには、通常、電磁波(光)を使い、分子による電磁波の吸収や放出の現象を観測する分子分光法と呼ばれる方法が用いられる。この分子分光法を用いる方法は化学のみならず、薬学や医学等、様々な分野において物質の分析に使われ、材料等の評価をする際に必要不可欠な分析法であり、非常に応用範囲が広い。本講義では分光学の基礎理論を学び、具体例として赤外や、可視、紫外光を使って分子の性質を解析する方法の基礎について理解を深める。 分子のエネルギーは、原子核の運動状態に由来する分子全体の並進運動、回転運動、振動運動及び分子中の電子の運動によって決定される。このうち、分子全体の並進運動以外はすべて量子化されており、個々の分子のエネルギー準位は離散的であり、それぞれの運動状態によって異なるエネルギー準位構造をもつ。この中で、振動運動は原子間の結合の強さによって決まるので、分子に関する重要な情報をもっている。振動状態の変化を引き起こす電磁波のエネルギーはおおよそ赤外領域に相当し、振動スペクトルの観測は振動分光とも呼ばれ、振動のスペクトルを解析することで原子同士を結びつけている化学結合に関する情報が得られる。振動スペクトルを観測するには赤外吸収とラマンスペクトルの2つの方法があり、本講義ではそれぞれのスペクトルに現れる振動準位の違いおよび解析法について学ぶ。また、気体分子においては振動状態の変化と共に回転状態も変化する振動回転スペクトルが観測されるが、その解析から分子構造を決定する方法についても学ぶ。 さらに、電子の運動状態の変化に要する電磁波のエネルギーは振動状態の変化よりさらに大きく、可視・紫外領域に相当する。この領域に現れる遷移のエネルギーと吸収強度が分子構造とどのように関係し、分子構造が変わることによって、どのように吸収スペクトルが変化するのか理解し、さらに、同じ分子でも溶媒によって異なる吸収スペクトルを与えることを学ぶ。電子遷移を観測する際、本来禁制である遷移が弱いながら吸収スペクトルとして観測される。これは振動と電子状態の相互作用によるものであるが、本来禁制である電子遷移が現れる理由についても学ぶ。 |
機能生物化学実験 | 後期 | 2 | 山口 武夫、倉岡 功、 福田 将虎 |
機能生物化学実験では大きく分けて5つのテーマ、すなわち (1) 実験の基礎技術、(2) タンパク質の抽出と精製、(3) 酵素反応と速度論解析、(4) 生体膜の性質、(5) 遺伝子工学の利用について学習していきます。テーマ(1)は生化学実験を実施する際の基礎技術を解説・習得するものです。(2)と(3)は二年次に学習した基礎生物化学実験の内容を更に深めて行くものです。 |
有機生物化学実験 | 前期 | 2 | 大熊・松原・ 塩路・草野・ 古賀・長洞 |
「基礎有機化学実験」を2年で学び、その延長の実験として有機生物化学実験を実施する。基本的な有機化学実験の操作を修得した学生に対し、研究に必要な技術の習得を目的に実施する。有機化学と生物化学の合成実験を行う。 講義の上では学んでいることが多いかもしれないが、実験を行い物質を実際に扱うことにより、化合物の性質を感覚的に体得することが本実験の目的である。講義ではわずかな時間で学ぶ実験も実際に行うと思うように行かない。創意工夫をすることにより目的の化合物を合成できる。実験の過程を詳細に検討しながら収率をあげる工夫をすることにより、実験に必要な技術を学んでいく。 反応は多岐にわたるが、有機化学の反応が生体内でも行われていることを種々の実験により確かめる。 |
生物化学C | 前期 | 2 | 倉岡 功 |
生物化学は、生体関連物質の構造や性質を扱う物質生化学と、それらの物質の動的変化を扱う代謝生化学に大別される。前者に関しては既に「生物化学A、B」で学習したことと思う。本講義「生物化学C」の内容は主として後者の動的生化学に関するものである。ここでは、物質生化学の基本的事項として不可欠な知識を学習する。生体内では絶えず複雑な物質変化が起こっている。この変化は生物が生命を維持するために必要なものである。「生物化学C」では、このような変化の過程や意義とそれに伴う分子機構について解説する。この講義の基礎事項として、各種生体物質の構造、性質の理解が必要である。また、特に、酵素の性質や補助因子としての補酵素の知識が必須である。従って、それらの知識がまだ身についていない人は、「生物化学A、B」の講義内容をしっかり復習しておこう。
なお、授業内容に関する講義資料を、化学科機能生物化学研究室のホームページの「代謝マップ」(HPを参照)に公開しているので、試験前などに参考にするとよい。
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生物化学D | 後期 | 2 | 福田 将虎 | 生物化学Dでは、これまでに生物化学A~Cで学んだことを活かし、「ゲノム情報をどのように使って生物が生きているのか」を学びます。近年の生命科学分野の発展は目覚ましいものがあり、「DNA」や「遺伝子」「ゲノム」「クローン」などの言葉を耳にする機会も多くなってきました。また最近では、ゲノム編集と呼ばれる遺伝情報を改変する技術が開発され、基礎研究だけでなく医療や創薬など実社会においてゲノム改変技術が使われ始めています。そこで本講義ではまず、細胞の情報を司る物質、すなわち核酸(DNAとRNA)に重点を置き、化学の観点から構造・性質と機能について学習します。同時に、細胞内でDNA情報がRNAに写し取られる「転写」と、RNA情報を使って機能物質であるタンパク質を合成する「翻訳」について、その分子機構を詳しく解説します。その後、転写後修飾や翻訳後修飾を始めとする遺伝子発現・機能の調節機構について学習します。さらに、生命科学研究を行うための基礎的な研究手法とその原理を学びつつ、「遺伝子工学」あるいは「バイオテクノロジー」と呼ばれる手法についての知識を深めます。最後に、DNAを人工的に操作することにより遺伝子の機能を解明し、生体の性質を改変する実際の研究トピックに触れ、現在の遺伝子治療・遺伝子診断やクローン動物の作出などのバイオテクノロジーについて紹介する。 |
生物物理化学 | 後期 | 2 | 山口 武夫 | 21世紀、生命現象の神秘的な謎は一つ一つ分子レベルで解明されていくであろう。人間から植物まで形あるすべての生命体はその基本単位である細胞から構築されている。莫大な数の細胞が構造的および機能的に結びついて一個の生命体ができあがっている。この講義では最初に細胞内で起こっている化学反応(あるいはエネルギー変換)が熱力学によってどのように理解できるかを見てみよう。次に、細胞と細胞の結合や細胞間の情報伝達が細胞表面(界面)で行われていることから、膜表面(界面)での物理化学的諸性質を学習する。特に、肺や膀胱の機能を表面(界面)張力の立場から考えるところは面白いと思う。最後に、両親媒性分子の集合体である生体膜について構造と機能の両面から学ぶ。特に、生体膜のところは、機能生物化学実験をよりよく理解するために有益である。 テキスト「生物物理化学の基礎」の第1章、第4章、第5章を事前に読んでおくこと。また、授業中に関連することについて質問を行ったり、章末の演習問題を選んで、レポート提出を課す。 |
有機材料合成化学 | 後期 | 2 | 大熊 健太郎 | 有機化合物を取り扱うことは化学教室のほとんど全ての研究室で行われている。したがって、研究を行う際に簡単な合成を行うことが出発点となることがある。有機合成の基本は炭素炭素結合の形成反応にある。その方法は数多く開発されているのでその幾つかを学び有機化学がいかにして発展してきたかをたどっていきたい。この講義では、主に炭素アニオンの反応性について学ぶ。有機材料の合成に必要な基本的な反応を学ぶことになる。 アルデヒドケトンの項ではケト-エノールの互変異性を学び、酸性度によりエノール体が容易に生成することを学ぶ。 塩基の作用により、容易にエノラートが生成するので、その反応性について学ぶ。 合成の実際を通して、今まで学んだことがどれほど利用されるかを学ぶ。実際に研究室で行ない発表された研究論文を例にして、反応機構や含まれている炭素炭素結合反応について学ぶ。 |
構造有機化学 | 前期 | 2 | 林田 修 | 有機化合物は、生命体を構成する重要な物質であるばかりでなく、材料科学の分野においても重要な役割を果たしている。本講義では、このような有機化合物の特徴や性質を理解し、その構造を分子レベルで解明するための分析機器を使った解析法について学ぶのがねらいである。なかでも、核磁気共鳴(NMR)分光法は有機化学者が使うことができる最も有効な分光法であり、有機化学者が最初に頼る構造決定の方法である。NMR 分光法は炭素?水素の構成に関する化学的な情報を提供してくれる。分子式に関する情報を与える質量分析法と分子の官能基に関する情報が得られる赤外分光法を併用すると、非常に複雑な分子であっても、構造を解くことが可能になる。このように、NMR 分光法は構造決定に最も価値の高い分光法の一つであることから、低分子化合物にかぎらず、生物化学の分野においてはタンパク質の構造や折りたたみを調べるためにも NMR 分光法の技術が使われている。これらNMR を主体とした分析法の原理およびそれらのスペクトルの解釈と構造決定について基礎から学ぶ。 |
生物有機化学 | 前期 | 2 | 松原 公紀 | 生物有機化学では、生態系の様々な物質や化学現象を有機化学の側面から捉えることになる。すなわち有機化学の反応・有機化合物の性質を生化学の反応や生体物質の性質にリンクさせ、さらには生理活性物質の実験室的合成法などを扱う。したがって本講義は、2年次までに学んだアルコール、アルケン、芳香族の化学を踏まえ、下の①?④に示したように、生体物質であるケトン・アルデヒド、糖類、カルボン酸、アミンの有機化学を学ぶ。さらに、この20年ほどで主流になった、生理活性物質・医薬品合成に用いられる金属試薬を用いたいくつかの新しい有機合成反応⑤について学ぶ。 ①有機化学的なケトン・アルデヒドの合成法とそれらの反応について学ぶ。有機物の酸化と還元とともに、付加反応のしくみとバリエーションについて学ぶ。 ②糖類の化学研究においてアルコール、ケトン、アルデヒドの性質がどのように応用されているかを学ぶ。また、製薬研究で行われている糖類の変換反応、構築反応についても一部触れる。 ③カルボン酸の合成法、還元やカルボン酸誘導体の反応について学ぶ。また生体内でどのようにカルボン酸が合成されるか、について有機化学的な解釈に触れる。またペプチド合成法に触れ、保護と脱保護について学ぶ。 ④アミンは生体物質のほとんどに含まれる官能基である。この性質を理解し、実験室的合成法および反応性について学ぶ。 ⑤最近のノーベル化学賞をみればわかるように、現在有機化学の主流は金属試薬を使った有機合成反応である。この新しい分野を概説し、いくつかの重要な反応について応用も含めて解説する。 |
4年次開講科目
栗崎 敏、川路 均、神崎 亮 |
市川 慎太郎・草野 修平